対馬の成り立ち
対馬は南北約82km東西約18kmと細長く、朝鮮半島から約50km、九州までは150kmの距離に位置しています。海岸は沈降と隆起によって出来たリアス式海岸でありその総延長は915km、周辺に107の小島を有し、日本の離島の中では3番目の大きさ(約696km²)になります。

対馬が最後に島になったのは、今から約2万年前以降と考えられています。約15万年前、更新世後期の氷期には今と比べて海水面が低かったので、大陸と対馬と日本本土は陸続きでつながっていました。約10万年前の間氷期に、対馬と大陸の間に海峡ができ、対馬は大陸と離れ、その後対馬と日本本土の間にも海峡ができ日本本土とも離れました。約6~2万年前の最終氷期に再び対馬と日本本土は陸続きになりましたが、この氷期が終わるとその後は大陸とも日本本土ともつながることなく対馬は島になったと考えられています。

そのような地理的特異性から対馬にはここでしか見ることができない生物や、大陸由来の生物が数多く生息しています。一方で日本本土ではごく身近に存在するタヌキやノウサギ、イモリなどが分布していないことも対馬の生物相の特異性を表しています。島という閉鎖的な環境で形成された生物相と共生する地域社会を形成することが対馬における生物多様性を維持していくうえで重要であると考えられています。
希少な生き物を守る
対馬は、かつて大陸と日本本土をつながっていた生物地理学的背景(成り立ち)を反映して、大陸には分布するが日本本土には分布していない種(大陸型)、大陸には分布していないが日本本土には分布する種(日本型)、対馬にのみ分布する種(固有型)、大陸から日本本土まで共通して分布する種(共通型)の種が混在しており、島という閉鎖的な環境で独特の生物相を形成しているという点で、生物多様性の保全上重要な地域です。
対馬だけに生息する動物(固有型)
ツシマヒミズ
ツシマアカネズミ
ツシマカヤネズミ
ツシマヒメネズミ
ツシマサンショウウオ
日本では対馬にしかいない動物(大陸型)
クロアカコウモリ
チョウセンコジネズミ
ツシマスベトカゲ
アカマダラ
アキマドボタル
ツシマウラボシシジミ
日本では対馬にのみ生息するシジミチョウの仲間です。中国、台湾、インドなどに生息する種の日本固有亜種にあたります。対馬では1980年ごろから急増したシカの被害に加え、環境の変化により2000年代後半以降急激に数を減らし、絶滅危惧ⅠA類(CR)として掲載 (環境省レッドリスト2020)されております。また種の保存法に基づき、国内希少野生動植物種に指定されており、捕獲等が原則禁止されています。現在、ツシマウラボシシジミの保護事業として保護区が設置され、保護区内の環境整備、個体数調査や幼虫のエサとなる植物の育成・植栽 が行われています。また、保護区内の生息数が十分でない場合は、島外の動植物園で飼育・繁殖させ、増やした個体の一部を対馬に送り、野生に返す取り組みも行っています。個体数調査では保護区内でどのくらいの卵・幼虫・蛹・成虫が生息しているか、保護事業の成果やツシマウラボシシジミに適している生息環境(食草の量や光環境等)を知るため定期的に実施しています。

外来種を防ぐ
ツマアカスズメバチ
ツマアカスズメバチは、中国南部、台湾、東南アジア等を原産地とし、2003年には韓国(釜山)で侵入が確認され、2004年にはフランス(ボルドー)で侵入が確認され、生態系、養蜂業への影響、人への被害が発生しています。日本では、2012年10月、対馬において初めて確認され、生態系、養蜂業への影響、人への被害が懸念されることから、2015年1月に特定外来生物に指定されました。現在、長崎県、対馬市と協力し越冬した女王バチが単独で営巣する4~5月にトラップによる駆除や巣の撤去、分布状況の把握を行っています。
